郵政改革法案は是か非か?
 5月31日,郵政改革法案が衆議院本会議で可決されました。次は参議院での審議となりますが,6月16日までに成立するかは不透明ですね。消費者の観点からすると,都市部の生活にはほとんど影響がないように思われますが,地方では直接的な問題を含んでいると言われます。外国のように,民営化されたために田舎の金融機関がなくなってしまったとか,極端に郵便料金が高くなったとかいう心配のことですね。


ところで,少し視点を変えてみましょう。

郵政改革の急先鋒にいる亀井さんは「ゆうちょの金で国債をもっと買う」とか「アメリカの国債も買う」とか発言しており,実際,昨年ゆうちょ銀行の金でアメリカ国債約3000億円分を購入したことが日経のニュースになっていました。うーん,民主党はいつの間に方針転換をしたのでしょうか?それとも,僕の認識が違ってたんでしょうか?亀井さんの話は,ゆうちょの運用先を多元化していくという趣旨の発言でしたが,これは結果的に亀井さんの大嫌いな竹中さんが以前に言っていたことと同じでは?・・そうすると大きな違いは,ゆうちょ関連の株式を公開するかしないかという点になってくるんでしょうか?


民主党になって,ゆうちょ関連株の公開が凍結されていますね。これは,ゆうちょを国営銀行にして国のために使える銀行にするということだと思うのですが,ご存知のとおり,日本の国債は以前からゆうちょの資金を使って支えている状況があります。次の記事にも,ゆうちょで集めた金の8割を日本国債で運用していることが出ています。


http://www.asahi.com/business/update/0522/TKY201005220259.html

http://www.asahi.com/business/update/0204/TKY201002030498.html


また,今年度の国債運用についてもニュースになっています。


http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-14608120100331


さて,国の借金の引受手としてゆうちょは重要な役割をしていますが,今回の郵政改革はこれを強めることになると見ていいのではないでしょうか。例えば貯金の上限を2000万円に引き上げるのも,その一つではと思ってしまいます(鳩山さんは違うと言っているようですが・・)。


http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100331-OYT8T00741.htm


他方で,ゆうちょに集まるお金を市場に回さずに国債の引受などをしていては,経済が回復しないという議論もあります。国債は日銀が引き受けろという議論もあります。


こう見ると,地方の便利だけではない深刻な日本の問題が横たわっているのが見えてきます。郵政は民営化路線がいいのか?それとも亀井さんが言うように揺り戻しをした方がいいのか?なかなか難しいところです。国民としては,もっと注目して議論すべき法案だと思います。(K)

| All Along The Watchtower | 20:38 | - | trackbacks(0) |
遺留分01
遺留分権利者が,価額弁償請求権を取得する時期及び遅延損害金の起算日はいつか?

最高裁H20/01/24判決
平成20年度版重判民法12,判時1999号73頁

民法1041条

「・・受遺者が遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受け,遺贈の目的の価額について履行の提供をした場合には,当該受遺者は目的物の返還義務を免れ,他方,当該遺留分権利者は,受遺者に対し,弁償すべき価額に相当する金銭の支払いを求める権利を取得すると解される(最判昭和54.7.10,最判平成9.2.25参照)。また,上記受遺者が遺贈の目的の価額について履行の提供をしていない場合であっても,遺留分権利者に対して遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をしたときには,遺留分権利者は,受遺者に対し,遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるし,それに代わる価額弁償請求権を行使することもできると解される(最判昭和51.8.30,前掲最判平成9.2.25)。そして,上記遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には,当該遺留分権利者は,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い,これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解する・・」
「したがって,受遺者は,遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした時点で,遺留分権利者に対し,適正な遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うというべきであり,同価額が最終的には裁判所によって事実審口頭弁論終結時を基準として定められることになっても(前掲最判昭和51.8.30参照),同義務の発生時点が事実審口頭弁論終結時となるものではない。そうすると,民法1041条1項に基づく価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日は,上記のとおり遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し,かつ,受遺者に対し弁償金の支払いを請求した日の翌日ということになる。」

事案は以下のとおりです。

被相続人Aは,平成8年2月9日に死亡しました。相続人は妻であるB、実子であるX1,Y1,Y2,そして養子であるX2,Cです。

Aは,公正証書遺言により,Aの遺産をYら及びBにそれぞれ相続させる旨の遺言をしていました。

そこで,Xらは,平成8818日,Yら及びBに対して遺留分減殺請求権を行使し,Yら及びBがAから前記公正証書遺言に基づき取得した遺産に月,それぞれ遺留分にあたる20分の1に相当する部分の返還をするように求めました。

Xらは,平成9年11月19日に本訴を提起し,Y2は平成15年8月5日,Y1は平成16年2月27日にXらに対し,価額弁償をする旨の意思表示をしました。これを受け,Xらは,平成16年7月16日の口頭弁論期日において,訴えを変更し,価額弁償請求権に基づく金員の支払い及び相続開始の日である平成8年2月9日からの遅延損害金の支払いを求めました。

 主な事実を時系列にすると以下のようになります。

 ①H8.8.18  X 遺留分減殺請求権行使

 ②H8.11    X 本訴提起

 ③H15.8  Y2 価額弁償の意思表示

 ④H16.2  Y1 価額弁償の意思表示

 ⑤H16.7.16 X 訴えの変更

このような事実関係の下,第1審は,遺留分減殺請求をした日(①)の翌日から遅滞状態になるとして附帯請求を認容しました。

原審は,判決確定の日の翌日から遅滞に陥るとし,1審判決を変更しました。その理由は,遺留分権利者は,裁判所が1041条の規定による価額を定めてその支払いを命じることによってはじめて受遺者に対する価額弁償請求権を取得するというものです。

本判決は,上記⑤の翌日を遅延損害金の起算日としました。これは,遺留分権利者が価額弁償請求権を行使する意思表示をした場合,このときに当該権利を確定的に取得するというように考えたためです。
この考え方によれば,遺留分権利者は,価額弁償請求権を行使する意思表示をした場合,対象物の所有権,現物返還請求権を遡及的に失うことになるため,意思表示によって受遺者の無資力リスクを負うことになります。また,価額弁償の際の価額算定基準時は,事実審口頭弁論終結時となるので,意思表示後の目的物の価額変動を斟酌した上で意思表示をしなければならない点に注意しなければなりません。(M)
| 法律/家事・相続 | 17:37 | - | trackbacks(1) |
小規模個人再生01
 小規模個人再生の決議において再生計画案が否決され再生手続の廃止決定がなされた後に反対債権者から同意が得られた場合には,その再生手続廃止決定を取消すことができるか?

民事再生172条の5,230条6項,237条1項
東京高裁平成21/03/17決定 判タ1318号266頁

「・・小規模個人再生手続においても,通常再生手続であれば,決議のための債権者集会を続行することができるだけの債権者の同意が得られており,また,決議後遅滞なく,決議において不同意の意思を表明した債権者全員から再生計画案に同意する旨の意見が表明されており,かつ,再生計画案の不認可事由が認められないような場合には,再生手続開始決定に対する即時抗告審において,その後の事情を踏まえて,再生計画案の認可を可能とすべく,再生手続廃止決定を取消すことができるものと解する・・」

事案は,簡単に言うと次のとおりです。
債権者4名の小規模個人再生事件において,一般債権者の1名(議決権額の2分の1を超える)が再生計画案に同意しない旨の回答をしたため,再生裁判所は,再生手続廃止決定をしました。その後,申立代理人の説得等によって当該債権者は不同意の意思表示を撤回し,再生手続の進行を希望する旨の上申書を交付しました。これを受けて,申立人が廃止決定に対する抗告を申立てたという事案です。

通常の再生手続においては,平成14年改正によって債権者集会と書面決議を併用する方法が新設され,この方法がとられた場合には,決議において再生計画案が否決されても,過半数の債権者または議決権額の2分の1以上の同意がある場合には,手続を続行して再決議をすることができることとなりました。ところが,小規模個人再生では,書面決議の方法しか採用されていないため,再度の決議の方法がないのです。そこで,本決定は,上記のように判断して,手続の不備を補ったものです。

法律上の不備のある部分であり,通常であれば「法律上しかたない」で終わってしまう問題ですが,申立代理人ががんばり,裁判所もこれを正面から受け止めてくれたものだと思われます。実務上とても考えさせられる事例ですし,参考になります。
| 法律/破産・再生・任意整理 | 19:32 | - | trackbacks(0) |
所有権留保01
 自動車の保留所有権者は,その自動車が第三者の土地に放置された場合,土地所有者に対してその撤去義務及び損害賠償責任を負うか?

民法206条,369条,709条

最高裁H21/03/10判決
判時2054号37頁

「動産(自動車)の購入代金を立替払する者が立替払金債務が完済されるまで同債務の担保として当該動産の所有権を留保する場合において・・留保所有権者は,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産が第三者の土地上に存在して第三者の土地所有権の行使を妨害しているとしても,特段の事情がない限り,当該動産の撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,残債務弁済期が経過した後は,留保所有権が担保権の性質を有するからといって,上記撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当である」

事案の概要は次のとおりです。
駐車場の所有者Xは,Aとの間で駐車場賃貸借契約を締結しました。その後,Aは,自動車販売店から自動車を購入しましたが,その際,自動車の代金を信販会社Yが立替払をするというオートローン契約を締結しており,その契約においては,AがYに対して立替払金債務を分割して支払うこと,完済まで自動車の所有権はYに留保されること等が定められていました。
その後,Aが駐車場料金を支払わず,XA間の賃貸借契約が解除されましたが,その自動車が駐車されたままになっていたため,XがYに対して,土地所有権に基づく駐車場の明渡しと不法行為による使用料相当の損害賠償の支払いを求めたものです。

   X(駐車場のオーナー)------A(駐車場契約者。自動車購入者)
                    |
                 Y(信販会社。留保所有権者)

1審,原審ともに,Yは自動車の担保権を有しているにすぎないとして,Xの請求を棄却しました。これに対してXが上告したものです。

所有権留保及び譲渡担保については,その法的性質が争われており,判例は一般に所有権的構成をとると解されてきました(不動産譲渡担保について最高裁H06/02/22等)。本件もその傾向を同じくするものといえます。すなわち,本判決は,上記判断の理由として「なぜなら・・留保所有権者は,原則として,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産の交換価値を把握するにとどまるが,残債務弁済期の経過後は,当該動産を占有し,処分することができる権能を有するものと解されるからである」と述べており,このような判断はすでに上記最判でも触れていました。
また,不法行為責任について本判決は,留保書有権者は,原則として妨害の事実を知らなければ不法行為責任に問われないとしています。これは不法行為が成立するためには故意が認められる必要があるようにも読めます。もっとも「原則として」と留保を付していることから,過失責任を否定するものではないとも言えます。(M)

本件判例を見ると,刑法でスペアーキーを使用して債務者に無断で自動車を引き上げた自動車金融の事案につき窃盗罪の成立を認めた判例(最高裁H01/07/07)を思い出します。例えば,本件判例によれば,Aが所在不明となっている場合にも,残債務弁済期の経過後は,Yは駐車場の自動車を引き上げる責任があるということとなりますが,そうすると窃盗罪との関係はどうなるんでしょうか?
本件判例を見ると「Aから本件車両の引渡を受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができる・・」という点に触れており,ここに着目すると,信販会社Yとしては,Aから任意に自動車を引渡してもらって,処分しなさいという前提かとも思われます。
そうすると,Aが所在不明の場合には,一方でXからは妨害排除及び賃料相当損害金の責任を問われ,これを避けるために直ちに引き上げれば,後日,Aから窃盗罪の責任を問われかねないという板挟み状態になるんでしょうか?
自動車を売却して残債務の弁済に充当できるというけれど,Aがいない限り売却及び登録変更ができない訳ですよね?・・そうすると,駐車場オーナーの危険はオートローンで利益を上げている信販会社が引き受けろということなんでしょうかね。自動車関係は難しい問題が多いです。(K)
| 法律/民事 | 19:23 | - | trackbacks(0) |
住居侵入罪02
分譲マンションの各居室へのビラ配りは住居侵入罪にあたるか?

刑法130条前段,憲法21条1項

最高裁H21/11/30 裁時1496号17頁
cf.判時1949号170頁(立川反戦ビラ配布事件)

「本件マンションの構造及び管理状況,玄関ホール内の状況,上記はり紙の記載内容(「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます」など),本件立ち入りの目的からみて,本件立ち入り行為が本件管理組合の意思に反するものであることは明らかであり,被告人もこれを認識していたものと認められる。そして,本件マンションは分譲マンションであり,本件立ち入り行為の態様は玄関内東側ドアを開けて7階から3階までの本件マンションの廊下等に立ち入ったというものであることなどに照らすと,法益侵害の程度が極めて軽微なものであったということはできず,他に犯罪の成立を阻却すべき事情は認められないから,本件立ち入り行為について刑法130条前段の罪が成立する」

本件の事案は,政党のビラを各住戸に配布するために,分譲マンションの玄関出入口から入った被告人が,1階廊下を経てエレベーターに乗って7階に上がり,7階から3階までの各住戸のドアポストにビラを配っていたところ,マンション住人に声をかけられてその配布を中止したが,その後に逮捕に至ったというものです。

1審では,被告人の行為は「住居」に立ち入る行為ではあるものの,①マンションへのビラ配りのための立ち入りは刑罰をもって禁じられているとの社会通念は確立しているとはいえない,②はり紙の記載内容やマンションの構造から,外観上部外者の立ち入りを禁止したことが明らかとはいえず,管理組合の部外者立入禁止の意思表示が来訪者に伝わるような実効的な措置がとられていたとはいえないことをあげ,無罪を言い渡しました。

原審は,この1審判決を破棄し,管理組合がビラ等の配布のための立入を禁止していること,はり紙の内容,掲示位置,マンションの構造などから,実効的な措置がとられていなかったとはいえないとして,違法性阻却事由は認められないとして,罰金5万円の有罪判決を言い渡しました。

本件では,共用部分を「住居」と解していますが,本件の前年に出された最高裁H20/04/11判決(立川反戦ビラ配布事件)では,集合住宅の共用部分を「邸宅」であると判断しており,両者の整合性が問題となりそうですが,20年判決の事案は,住人の他に別個管理者が存在していたのに対し,管理権者とされるのは居住者から構成される管理組合から派生した理事会であって,居住者と同視できるため,判断が分かれたのではないかと思われます(M)。

上記政治的ビラの配布が政治的表現の一態様であることを考えると,1審判決にも相当な理由があるように思われます。二つの最高裁判決が出た以上しかたないのでしょうが,単なる迷惑の範囲を超えて,国家が処罰すべき犯罪行為というべきかどうか,とても考えさせられる事件です。また,これが商業宣伝ビラの場合はどうか?各階ではなく1階玄関脇にある各部屋のポストへの投函だった場合はどうか?などのバリエーションも考えられます(K)。
| 法律/刑事 | 22:27 | - | trackbacks(0) |
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