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窃盗罪01
 窃盗罪の既遂時期はいつか?

刑法235条,243条,43条

東京高裁H21/12/22判決 判タ1333号282頁

本件は,簡単に言うと,ジャスコ3階の家電売場に陳列してあったテレビ(幅469ミリ,高さ409ミリ,奥行167ミリ)を買い物カートに乗せ,レジで精算せずに同じフロアにあるトイレの洗面台の下の棚の中に隠し入れたという事案です。店舗内に警備員や監視カメラも設置されている状況で,本件テレビの窃盗が未遂か既遂かが争われたものです。

東京高裁は,「被告人は,本件テレビをトイレの収納棚に隠し入れた時点で,被害者である本件店舗関係者が把握困難な場所に本件テレビを移動させたのであり,しかも上記のように被告人が袋を買う際に不審を抱かなければ,これを店外に運び出すことが十分に可能な状態に置いたのであるから,本件テレビを被害者の支配内から自己の支配内に移したということができ,本件窃盗を既遂と認めた原判決は正当」と判断しました。

窃盗の既遂時期については,一般に「取得説」が採用されていると思います。その内容は,「窃取」の意義をどう捉えるかによっていくらかの差がありますが,通説的には「占有を取得したとき」「他人の占有を侵害して財物を自己の占有に移したとき」「犯人が権利者を排除して,客体を自己の事実的支配下におさめた時点」に既遂に達するとみる立場です。そして定義から演繹的に結論が出る訳ではなく,具体的には,財物の性質・形状,被害者の占有状況・管理態様,窃取行為の態様などを考慮して具体的に判断されるとされます。

そして,以前は「住居・店内からの窃取の場合は,財物に対する占有者の支配力は強いから,目的物が小さい場合でも,容易に占有を設定できる物であるときを除き,原則として屋外への搬出が必要となる」と理解されていたと思います(大谷實・各論・第3版,199頁など)。この見解からするなら,本件は未遂という方向に行きそうです。
しかし,上記判例は「被害者が袋を購入する際の言動に不審を感じた店員の機転がなければ,被告人は購入した袋に本件テレビを隠し入れて店外に持ち出すことが十分に可能であった・・自己の支配内に移したといえる」としているのです。

管理態様としては警備員や監視カメラの存在は被害者の占有を強めるように思われますが,本件では逆にこれらがあっても「トイレに隠すことができた」ということを実質的な支配の設定と評価しているようにも見えます。また,この判例には正直なところ違和感があります。それは「店員の機転」を言うよりも,まずは,客観的な「トイレから店外に持ち出すことの可能性」を述べるべきなのではないでしょうか(3階の平面図を見てみないことには納得できない感じがします)?

これまで実務的には「レジの外側に出た時」や,さらに堅く考えて「店舗から一歩外に出た時」などに既遂に達したとして逮捕するケースが多かったと思われますが,本件判例によってさらに具体的に個々の事案を検討する必要に迫られるように思われます。
| 法律/刑事 | 21:57 | - | trackbacks(0) |
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