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所有権留保01
 自動車の保留所有権者は,その自動車が第三者の土地に放置された場合,土地所有者に対してその撤去義務及び損害賠償責任を負うか?

民法206条,369条,709条

最高裁H21/03/10判決
判時2054号37頁

「動産(自動車)の購入代金を立替払する者が立替払金債務が完済されるまで同債務の担保として当該動産の所有権を留保する場合において・・留保所有権者は,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産が第三者の土地上に存在して第三者の土地所有権の行使を妨害しているとしても,特段の事情がない限り,当該動産の撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,残債務弁済期が経過した後は,留保所有権が担保権の性質を有するからといって,上記撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当である」

事案の概要は次のとおりです。
駐車場の所有者Xは,Aとの間で駐車場賃貸借契約を締結しました。その後,Aは,自動車販売店から自動車を購入しましたが,その際,自動車の代金を信販会社Yが立替払をするというオートローン契約を締結しており,その契約においては,AがYに対して立替払金債務を分割して支払うこと,完済まで自動車の所有権はYに留保されること等が定められていました。
その後,Aが駐車場料金を支払わず,XA間の賃貸借契約が解除されましたが,その自動車が駐車されたままになっていたため,XがYに対して,土地所有権に基づく駐車場の明渡しと不法行為による使用料相当の損害賠償の支払いを求めたものです。

   X(駐車場のオーナー)------A(駐車場契約者。自動車購入者)
                    |
                 Y(信販会社。留保所有権者)

1審,原審ともに,Yは自動車の担保権を有しているにすぎないとして,Xの請求を棄却しました。これに対してXが上告したものです。

所有権留保及び譲渡担保については,その法的性質が争われており,判例は一般に所有権的構成をとると解されてきました(不動産譲渡担保について最高裁H06/02/22等)。本件もその傾向を同じくするものといえます。すなわち,本判決は,上記判断の理由として「なぜなら・・留保所有権者は,原則として,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産の交換価値を把握するにとどまるが,残債務弁済期の経過後は,当該動産を占有し,処分することができる権能を有するものと解されるからである」と述べており,このような判断はすでに上記最判でも触れていました。
また,不法行為責任について本判決は,留保書有権者は,原則として妨害の事実を知らなければ不法行為責任に問われないとしています。これは不法行為が成立するためには故意が認められる必要があるようにも読めます。もっとも「原則として」と留保を付していることから,過失責任を否定するものではないとも言えます。(M)

本件判例を見ると,刑法でスペアーキーを使用して債務者に無断で自動車を引き上げた自動車金融の事案につき窃盗罪の成立を認めた判例(最高裁H01/07/07)を思い出します。例えば,本件判例によれば,Aが所在不明となっている場合にも,残債務弁済期の経過後は,Yは駐車場の自動車を引き上げる責任があるということとなりますが,そうすると窃盗罪との関係はどうなるんでしょうか?
本件判例を見ると「Aから本件車両の引渡を受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができる・・」という点に触れており,ここに着目すると,信販会社Yとしては,Aから任意に自動車を引渡してもらって,処分しなさいという前提かとも思われます。
そうすると,Aが所在不明の場合には,一方でXからは妨害排除及び賃料相当損害金の責任を問われ,これを避けるために直ちに引き上げれば,後日,Aから窃盗罪の責任を問われかねないという板挟み状態になるんでしょうか?
自動車を売却して残債務の弁済に充当できるというけれど,Aがいない限り売却及び登録変更ができない訳ですよね?・・そうすると,駐車場オーナーの危険はオートローンで利益を上げている信販会社が引き受けろということなんでしょうかね。自動車関係は難しい問題が多いです。(K)
| 法律/民事 | 19:23 | - | trackbacks(0) |
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