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住居侵入罪02
分譲マンションの各居室へのビラ配りは住居侵入罪にあたるか?

刑法130条前段,憲法21条1項

最高裁H21/11/30 裁時1496号17頁
cf.判時1949号170頁(立川反戦ビラ配布事件)

「本件マンションの構造及び管理状況,玄関ホール内の状況,上記はり紙の記載内容(「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます」など),本件立ち入りの目的からみて,本件立ち入り行為が本件管理組合の意思に反するものであることは明らかであり,被告人もこれを認識していたものと認められる。そして,本件マンションは分譲マンションであり,本件立ち入り行為の態様は玄関内東側ドアを開けて7階から3階までの本件マンションの廊下等に立ち入ったというものであることなどに照らすと,法益侵害の程度が極めて軽微なものであったということはできず,他に犯罪の成立を阻却すべき事情は認められないから,本件立ち入り行為について刑法130条前段の罪が成立する」

本件の事案は,政党のビラを各住戸に配布するために,分譲マンションの玄関出入口から入った被告人が,1階廊下を経てエレベーターに乗って7階に上がり,7階から3階までの各住戸のドアポストにビラを配っていたところ,マンション住人に声をかけられてその配布を中止したが,その後に逮捕に至ったというものです。

1審では,被告人の行為は「住居」に立ち入る行為ではあるものの,①マンションへのビラ配りのための立ち入りは刑罰をもって禁じられているとの社会通念は確立しているとはいえない,②はり紙の記載内容やマンションの構造から,外観上部外者の立ち入りを禁止したことが明らかとはいえず,管理組合の部外者立入禁止の意思表示が来訪者に伝わるような実効的な措置がとられていたとはいえないことをあげ,無罪を言い渡しました。

原審は,この1審判決を破棄し,管理組合がビラ等の配布のための立入を禁止していること,はり紙の内容,掲示位置,マンションの構造などから,実効的な措置がとられていなかったとはいえないとして,違法性阻却事由は認められないとして,罰金5万円の有罪判決を言い渡しました。

本件では,共用部分を「住居」と解していますが,本件の前年に出された最高裁H20/04/11判決(立川反戦ビラ配布事件)では,集合住宅の共用部分を「邸宅」であると判断しており,両者の整合性が問題となりそうですが,20年判決の事案は,住人の他に別個管理者が存在していたのに対し,管理権者とされるのは居住者から構成される管理組合から派生した理事会であって,居住者と同視できるため,判断が分かれたのではないかと思われます(M)。

上記政治的ビラの配布が政治的表現の一態様であることを考えると,1審判決にも相当な理由があるように思われます。二つの最高裁判決が出た以上しかたないのでしょうが,単なる迷惑の範囲を超えて,国家が処罰すべき犯罪行為というべきかどうか,とても考えさせられる事件です。また,これが商業宣伝ビラの場合はどうか?各階ではなく1階玄関脇にある各部屋のポストへの投函だった場合はどうか?などのバリエーションも考えられます(K)。
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