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住居侵入罪01
建造物侵入罪における「侵入」とは?

刑法130条前段

最高裁平成19年7月2日決定 判時1986号156頁

「被告人らは,現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で,現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入ったものであり,そのような立ち入りが同所の管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから,その立ち入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても,建造物侵入罪が成立するものというべきである。」

 事案の概要としては,被告人らは,ATMを利用する客のカードの暗証番号,名義人氏名,口座番号を盗撮するため,ATMの設置されている,行員の常駐しない出張所に営業中に立ち入り,うち1台のATMを相当時間にわたって占拠し続けることを共謀した。このような共謀に基づき,被告人らは,二日にわたり,二カ所の無人出張所で共謀にあるとおりの行為に及んだ,というものです。

本件のように,不特定多数の人が立ち入ることを予定している建造物について,不法な目的で立ち入る行為は,下級審裁判例でも建造物侵入罪が成立するとされてきました(仙台高判平成6.3.31(国体開会式を妨害する目的での侵入事例)等)。本件はその流れを踏襲するものですが,重要な意義を有するのは,「立ち入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても」建造物侵入罪が成立すると明確に示した点にあります。

判例は,許諾と錯誤について「真実を知っていたならば当該行為を許さなかっただろう」という条件関係が認められれば,広く許諾を無効とする立場を採用していると一般に解されています(殺人罪について,最高裁昭和33年11月21日判決)。本件もこのような考えに依っていると思われますが,これに対しては,真の目的が外見上判明しない場合には包括的承諾の範囲内の立ち入りであり,真の目的が明らかとなった時点で不退去罪の成否を問題とすれば足りるとする学説上の異論もあります。

もっとも,本件に限って言えば,不退去罪は退去要求が必要であるため,成立を認めるのは困難であったという事情がありましたし,上記学説は判例とは異なり,住居侵入罪を状態犯であると解するので,議論の前提が異なるという点に注意が必要です。

また,判例の傾向として,住居侵入罪の処罰範囲が拡大しているということも指摘できるでしょう(最高裁平成20年4月11日判決,同21年7月13日決定)。(M)

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