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瑕疵修補に代わる損害賠償と報酬請求
 請負人の報酬残金と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償に金額の差がある場合,同時履行関係が認められるのは,それぞれの全額か?対当額の範囲か?

民法634条2項,同533条

最高裁平成9年2月14日判決
判タ936号196頁,判タ952号189頁

「請負契約において,仕事の目的物に瑕疵があり,注文者が請負人に対して瑕疵の修補に代わる損害の賠償を求めたが,契約当事者のいずれからも右損害賠償債権と報酬債権とを相殺する旨の意思表示が行われなかった場合又はその意思表示の効果が生じないとされた場合には,民法634条2項により右両債権は同時履行の関係に立ち,契約当事者の一方は,相手方から債務の履行を受けるまでは,自己の債務の履行を拒むことができ,履行遅滞による責任も負わない・・」

「・・しかしながら,瑕疵の程度や右契約当事者の交渉態度等に鑑み,右瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬残債権全額の支払いを拒むことが信義則に反すると認められるときは,この限りではない」

事案としては,自宅建築を発注した注文者に対して,請負人は工事を完成させ引渡をしたが,注文者から「工事に欠陥がある」として,残代金の支払いを拒んだため,請負人が約1160万円の報酬の支払いを求めて訴訟となったものです。なお,原審が認定した瑕疵修補に代わる損害額は約82万円でした。
請負人としては,これだけの金額の差がありながら,報酬残金の全額について支払を拒めるのはおかしい!として「同時履行関係はそれぞれの見合う額の範囲内でしょう」と主張して上告したものです。

これに対して,最高裁は上記のとおり両債権の間の同時履行関係は,原則としてその全額の間に認められるとしたものです。634条2項の条文上は制限がないので,このような解釈になってしまうのでしょう。ただ,実務上は上記の「しかしながら・・」の部分は参考になります。わずかな瑕疵で報酬全額を拒むなどが典型でしょうか。
| 法律/民事・請負 | 19:08 | - | trackbacks(0) |
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