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相続放棄の熟慮期間01
 熟慮期間を繰り下げるべき特段の事情は?

大阪高裁H21/12/18 判タ1309号251頁
cf.最判S59/04/27 判タ528号81頁,判時1116号29頁
cf.最決H13/10/30 家月54.4.70頁

民法915条1項
「相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から三ヶ月以内に,相続について・・放棄をしなければならない」

「・・控訴人は,遅くとも本件遺産分割協議の際には,亡Aに積極財産のみならず多額の債務があることを認識し,これに沿った行動を取っていたといえるのであって,このような事情に照らせば,控訴人について,熟慮期間を本件訴状が控訴人に送達された日から起算すべき特段の事情があったということもできない」「したがって,控訴人がした相続放棄の申述は相続開始から三ヶ月を経過した後になされたもので,その受理は効力を有しない」

事実の概略は次のとおり
H15/03/25  A死亡
H15/12/25  相続人(控訴人)ら遺産分割協議
H19/06/08  債権者(被控訴人)が訴え提起(連帯保証債務履行請求事件)
H19/07/11  相続人(控訴人)相続放棄の申述〜受理

上記条文のとおり相続開始を知った時から3ヶ月(熟慮期間)以内に相続放棄をしなければなりません。
他方で,裁判所は「熟慮期間は,相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべき時から起算すべき」として熟慮期間の起算点の繰り下げを認めております(最判S59/04/27)。そこで,この判例の射程範囲が一応は問題となります。

この点,上記59年判決は,「相続放棄をしなかったのが,相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,そのように信じるについて相当な理由がある」事例ですから,本件事例とは前提事実が異なっていますが,これを素直に受け止めれば「相続人が被相続人に相続財産が全く存在しないと信じた場合に限る」という限定説をとっているように読めます。
他方,本件事案では,「一部相続財産の存在を知っていたが,通常人がその存在を知っていれば当然相続放棄をしたであろうような債務が存在しないと信じた場合も含む」という非限定説の立場から主張し,熟慮期間を繰り下げるべきと主張したものです。下級審の裁判例でも「熟慮期間は訴状送達の時から起算すべき」としているものもあります。

ところで,上記事案で熟慮期間を繰り下げるというのは無理な感じがします。かなり代理人もがんばっていることが分かりますが,残念ながら上記判決の結論的にはあまり異論はないのではないでしょうか。事案としても上告せずに確定しているようです。

ところで手続についてですが,
1)熟慮期間経過後の相続放棄の申述申立は基本的に受理されない。
2)しかし,家裁が熟慮期間中であると判断して申述を受理することはできる。
3)上記家裁の受理に対しては,抗告できない。
4)申述の有効・無効の決定を求める場合には,民事訴訟(無効確認)による。
ということです。
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