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報酬と損害賠償を相殺した後の遅延損害金発生時期
 請負人の報酬と瑕疵修補に代わる損害賠償が相殺された後の報酬残金は,いつから履行遅滞となるか?

民法634条2項,同533条,同506条2項

最高裁平成9年7月15日判決
判タ952号188頁

「請負人の報酬債権に対し,注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合,注文者は,請負人に対する相殺後の報酬残債務について,相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う・・」

ホテルの新築工事の事案ですが,請負人が工事を完成させて注文者に引渡しましたが,注文者が残金約2600万円を支払わないので訴訟になったものです。注文者は引渡遅延による損害及び不具合の補修に代わる損害賠償が合計1500万円以上になるとし,1審裁判中にこれを相殺する意思表示をしたというものです。

1審は,報酬残金に対する遅延損害金は,両債権に同時履行の関係があり損害賠償債権が存在する限り相殺後の報酬残債務は履行遅滞にならないとして,これを退けました。
2審は,相殺適状になった日の翌日から遅滞に陥るとしました。
そこで,最高裁は上記の判断をしたわけです。

相殺の遡及効からすると「相殺適状時から遅滞かな」と思われるところですが「相殺の遡及効は相殺意思表示の前に生じた事実まで覆すものではない」と通説的に言われています。相殺に意思表示を要するとしたことから生ずる効果を修正した規定と言われますが,こんなところにも法律の一種のフィクションが見えます。〜ちなみに,相殺適状にあれば意思表示なく当然に相殺されるというのが旧民法(フランス法)であり,意思表示を要するというのが現行法(ドイツ法)の考え方です。

上記に続けて「・・相殺する旨の意思表示をしたことにより,注文者の損害賠償債権が相殺適状時にさかのぼって消滅したとしても,相殺の意思表示をするまで注文者がこれと同時履行の関係にある報酬債務の全額について履行遅滞による責任を負わなかったという効果に影響はないと解すべきだからである」としています。

請負関係の訴訟では相殺の主張が出てくることが多々ありますが,相殺の次に履行遅滞〜遅延損害金の発生〜という思わぬ事態が待っていることを忘れないようにしたいものです。
| 法律/民事・請負 | 20:52 | - | trackbacks(0) |
瑕疵修補に代わる損害賠償と報酬請求
 請負人の報酬残金と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償に金額の差がある場合,同時履行関係が認められるのは,それぞれの全額か?対当額の範囲か?

民法634条2項,同533条

最高裁平成9年2月14日判決
判タ936号196頁,判タ952号189頁

「請負契約において,仕事の目的物に瑕疵があり,注文者が請負人に対して瑕疵の修補に代わる損害の賠償を求めたが,契約当事者のいずれからも右損害賠償債権と報酬債権とを相殺する旨の意思表示が行われなかった場合又はその意思表示の効果が生じないとされた場合には,民法634条2項により右両債権は同時履行の関係に立ち,契約当事者の一方は,相手方から債務の履行を受けるまでは,自己の債務の履行を拒むことができ,履行遅滞による責任も負わない・・」

「・・しかしながら,瑕疵の程度や右契約当事者の交渉態度等に鑑み,右瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬残債権全額の支払いを拒むことが信義則に反すると認められるときは,この限りではない」

事案としては,自宅建築を発注した注文者に対して,請負人は工事を完成させ引渡をしたが,注文者から「工事に欠陥がある」として,残代金の支払いを拒んだため,請負人が約1160万円の報酬の支払いを求めて訴訟となったものです。なお,原審が認定した瑕疵修補に代わる損害額は約82万円でした。
請負人としては,これだけの金額の差がありながら,報酬残金の全額について支払を拒めるのはおかしい!として「同時履行関係はそれぞれの見合う額の範囲内でしょう」と主張して上告したものです。

これに対して,最高裁は上記のとおり両債権の間の同時履行関係は,原則としてその全額の間に認められるとしたものです。634条2項の条文上は制限がないので,このような解釈になってしまうのでしょう。ただ,実務上は上記の「しかしながら・・」の部分は参考になります。わずかな瑕疵で報酬全額を拒むなどが典型でしょうか。
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