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遺留分01
遺留分権利者が,価額弁償請求権を取得する時期及び遅延損害金の起算日はいつか?

最高裁H20/01/24判決
平成20年度版重判民法12,判時1999号73頁

民法1041条

「・・受遺者が遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受け,遺贈の目的の価額について履行の提供をした場合には,当該受遺者は目的物の返還義務を免れ,他方,当該遺留分権利者は,受遺者に対し,弁償すべき価額に相当する金銭の支払いを求める権利を取得すると解される(最判昭和54.7.10,最判平成9.2.25参照)。また,上記受遺者が遺贈の目的の価額について履行の提供をしていない場合であっても,遺留分権利者に対して遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をしたときには,遺留分権利者は,受遺者に対し,遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるし,それに代わる価額弁償請求権を行使することもできると解される(最判昭和51.8.30,前掲最判平成9.2.25)。そして,上記遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には,当該遺留分権利者は,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い,これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解する・・」
「したがって,受遺者は,遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした時点で,遺留分権利者に対し,適正な遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うというべきであり,同価額が最終的には裁判所によって事実審口頭弁論終結時を基準として定められることになっても(前掲最判昭和51.8.30参照),同義務の発生時点が事実審口頭弁論終結時となるものではない。そうすると,民法1041条1項に基づく価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日は,上記のとおり遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し,かつ,受遺者に対し弁償金の支払いを請求した日の翌日ということになる。」

事案は以下のとおりです。

被相続人Aは,平成8年2月9日に死亡しました。相続人は妻であるB、実子であるX1,Y1,Y2,そして養子であるX2,Cです。

Aは,公正証書遺言により,Aの遺産をYら及びBにそれぞれ相続させる旨の遺言をしていました。

そこで,Xらは,平成8818日,Yら及びBに対して遺留分減殺請求権を行使し,Yら及びBがAから前記公正証書遺言に基づき取得した遺産に月,それぞれ遺留分にあたる20分の1に相当する部分の返還をするように求めました。

Xらは,平成9年11月19日に本訴を提起し,Y2は平成15年8月5日,Y1は平成16年2月27日にXらに対し,価額弁償をする旨の意思表示をしました。これを受け,Xらは,平成16年7月16日の口頭弁論期日において,訴えを変更し,価額弁償請求権に基づく金員の支払い及び相続開始の日である平成8年2月9日からの遅延損害金の支払いを求めました。

 主な事実を時系列にすると以下のようになります。

 ①H8.8.18  X 遺留分減殺請求権行使

 ②H8.11    X 本訴提起

 ③H15.8  Y2 価額弁償の意思表示

 ④H16.2  Y1 価額弁償の意思表示

 ⑤H16.7.16 X 訴えの変更

このような事実関係の下,第1審は,遺留分減殺請求をした日(①)の翌日から遅滞状態になるとして附帯請求を認容しました。

原審は,判決確定の日の翌日から遅滞に陥るとし,1審判決を変更しました。その理由は,遺留分権利者は,裁判所が1041条の規定による価額を定めてその支払いを命じることによってはじめて受遺者に対する価額弁償請求権を取得するというものです。

本判決は,上記⑤の翌日を遅延損害金の起算日としました。これは,遺留分権利者が価額弁償請求権を行使する意思表示をした場合,このときに当該権利を確定的に取得するというように考えたためです。
この考え方によれば,遺留分権利者は,価額弁償請求権を行使する意思表示をした場合,対象物の所有権,現物返還請求権を遡及的に失うことになるため,意思表示によって受遺者の無資力リスクを負うことになります。また,価額弁償の際の価額算定基準時は,事実審口頭弁論終結時となるので,意思表示後の目的物の価額変動を斟酌した上で意思表示をしなければならない点に注意しなければなりません。(M)
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相続放棄の熟慮期間01
 熟慮期間を繰り下げるべき特段の事情は?

大阪高裁H21/12/18 判タ1309号251頁
cf.最判S59/04/27 判タ528号81頁,判時1116号29頁
cf.最決H13/10/30 家月54.4.70頁

民法915条1項
「相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から三ヶ月以内に,相続について・・放棄をしなければならない」

「・・控訴人は,遅くとも本件遺産分割協議の際には,亡Aに積極財産のみならず多額の債務があることを認識し,これに沿った行動を取っていたといえるのであって,このような事情に照らせば,控訴人について,熟慮期間を本件訴状が控訴人に送達された日から起算すべき特段の事情があったということもできない」「したがって,控訴人がした相続放棄の申述は相続開始から三ヶ月を経過した後になされたもので,その受理は効力を有しない」

事実の概略は次のとおり
H15/03/25  A死亡
H15/12/25  相続人(控訴人)ら遺産分割協議
H19/06/08  債権者(被控訴人)が訴え提起(連帯保証債務履行請求事件)
H19/07/11  相続人(控訴人)相続放棄の申述〜受理

上記条文のとおり相続開始を知った時から3ヶ月(熟慮期間)以内に相続放棄をしなければなりません。
他方で,裁判所は「熟慮期間は,相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべき時から起算すべき」として熟慮期間の起算点の繰り下げを認めております(最判S59/04/27)。そこで,この判例の射程範囲が一応は問題となります。

この点,上記59年判決は,「相続放棄をしなかったのが,相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,そのように信じるについて相当な理由がある」事例ですから,本件事例とは前提事実が異なっていますが,これを素直に受け止めれば「相続人が被相続人に相続財産が全く存在しないと信じた場合に限る」という限定説をとっているように読めます。
他方,本件事案では,「一部相続財産の存在を知っていたが,通常人がその存在を知っていれば当然相続放棄をしたであろうような債務が存在しないと信じた場合も含む」という非限定説の立場から主張し,熟慮期間を繰り下げるべきと主張したものです。下級審の裁判例でも「熟慮期間は訴状送達の時から起算すべき」としているものもあります。

ところで,上記事案で熟慮期間を繰り下げるというのは無理な感じがします。かなり代理人もがんばっていることが分かりますが,残念ながら上記判決の結論的にはあまり異論はないのではないでしょうか。事案としても上告せずに確定しているようです。

ところで手続についてですが,
1)熟慮期間経過後の相続放棄の申述申立は基本的に受理されない。
2)しかし,家裁が熟慮期間中であると判断して申述を受理することはできる。
3)上記家裁の受理に対しては,抗告できない。
4)申述の有効・無効の決定を求める場合には,民事訴訟(無効確認)による。
ということです。
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