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保釈01
 刑事施設に収容され刑の執行が開始された後に保釈保証金を没取することができるか?

刑訴96条3項,規則91条1項2号
最決H21/12/09 判タ1333号118頁

事実関係は次のとおりです。

4月1日,A,窃盗の実刑判決が確定
 検察官が呼び出しをするも,Aは正当な理由なく出頭しない
 検察官が所在調査をしたが,Aは制限住居に住んでいない
8月10日,検察官は保釈保証金の没取を請求
8月14日,Aは身柄確保され収容される
9月9日,東京簡裁は,保釈保証金500万円のうち300万円を没取
 A側が東京高裁に抗告,その後,最高裁に特別抗告

「刑訴法96条3項は・・保釈保証金没取の制裁の予告の下,これによって逃亡等を防止するとともに,保釈された者が逃亡等をした場合には,上記制裁を科することにより,刑の確実な執行を担保する趣旨」「・・刑事施設に収容され刑の執行が開始された後であっても,保釈保証金を没取することができると解するのが相当である」

問題点は,刑訴法96条3項は「判決が確定した後・・出頭しないとき,又は逃亡したときは・・保証金の全部又は一部を没取しなければならない」とあるのみで,その時期的限界が明確でなく無制限に没取できそうにも読めます。しかし,規則91条1項2号は「被告人が刑事施設に収容されたとき・・没取されなかった保証金は,これを還付しなければならない」とされているので,刑事施設に収容されたときまでに没取されなかった保証金は没取できないのではないかとも解釈されることにあります。

非常に争いのある部分だったのですが,この最高裁決定によって解決されたと思います。

また,本件は,被告人の収容前に検察官が没取請求している事案であり,被告人が収容された後に検察官が没取請求することができるかは判断されていません。通常は,被告人が収容されれば直ちに還付されてしまうので,その後に没取ということはありえないわけですが,何らかの理由によって保証金がそのままになっている場合には,ありうる論点です。
| 法律/刑事 | 10:06 | - | trackbacks(0) |
窃盗罪01
 窃盗罪の既遂時期はいつか?

刑法235条,243条,43条

東京高裁H21/12/22判決 判タ1333号282頁

本件は,簡単に言うと,ジャスコ3階の家電売場に陳列してあったテレビ(幅469ミリ,高さ409ミリ,奥行167ミリ)を買い物カートに乗せ,レジで精算せずに同じフロアにあるトイレの洗面台の下の棚の中に隠し入れたという事案です。店舗内に警備員や監視カメラも設置されている状況で,本件テレビの窃盗が未遂か既遂かが争われたものです。

東京高裁は,「被告人は,本件テレビをトイレの収納棚に隠し入れた時点で,被害者である本件店舗関係者が把握困難な場所に本件テレビを移動させたのであり,しかも上記のように被告人が袋を買う際に不審を抱かなければ,これを店外に運び出すことが十分に可能な状態に置いたのであるから,本件テレビを被害者の支配内から自己の支配内に移したということができ,本件窃盗を既遂と認めた原判決は正当」と判断しました。

窃盗の既遂時期については,一般に「取得説」が採用されていると思います。その内容は,「窃取」の意義をどう捉えるかによっていくらかの差がありますが,通説的には「占有を取得したとき」「他人の占有を侵害して財物を自己の占有に移したとき」「犯人が権利者を排除して,客体を自己の事実的支配下におさめた時点」に既遂に達するとみる立場です。そして定義から演繹的に結論が出る訳ではなく,具体的には,財物の性質・形状,被害者の占有状況・管理態様,窃取行為の態様などを考慮して具体的に判断されるとされます。

そして,以前は「住居・店内からの窃取の場合は,財物に対する占有者の支配力は強いから,目的物が小さい場合でも,容易に占有を設定できる物であるときを除き,原則として屋外への搬出が必要となる」と理解されていたと思います(大谷實・各論・第3版,199頁など)。この見解からするなら,本件は未遂という方向に行きそうです。
しかし,上記判例は「被害者が袋を購入する際の言動に不審を感じた店員の機転がなければ,被告人は購入した袋に本件テレビを隠し入れて店外に持ち出すことが十分に可能であった・・自己の支配内に移したといえる」としているのです。

管理態様としては警備員や監視カメラの存在は被害者の占有を強めるように思われますが,本件では逆にこれらがあっても「トイレに隠すことができた」ということを実質的な支配の設定と評価しているようにも見えます。また,この判例には正直なところ違和感があります。それは「店員の機転」を言うよりも,まずは,客観的な「トイレから店外に持ち出すことの可能性」を述べるべきなのではないでしょうか(3階の平面図を見てみないことには納得できない感じがします)?

これまで実務的には「レジの外側に出た時」や,さらに堅く考えて「店舗から一歩外に出た時」などに既遂に達したとして逮捕するケースが多かったと思われますが,本件判例によってさらに具体的に個々の事案を検討する必要に迫られるように思われます。
| 法律/刑事 | 21:57 | - | trackbacks(0) |
住居侵入罪02
分譲マンションの各居室へのビラ配りは住居侵入罪にあたるか?

刑法130条前段,憲法21条1項

最高裁H21/11/30 裁時1496号17頁
cf.判時1949号170頁(立川反戦ビラ配布事件)

「本件マンションの構造及び管理状況,玄関ホール内の状況,上記はり紙の記載内容(「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます」など),本件立ち入りの目的からみて,本件立ち入り行為が本件管理組合の意思に反するものであることは明らかであり,被告人もこれを認識していたものと認められる。そして,本件マンションは分譲マンションであり,本件立ち入り行為の態様は玄関内東側ドアを開けて7階から3階までの本件マンションの廊下等に立ち入ったというものであることなどに照らすと,法益侵害の程度が極めて軽微なものであったということはできず,他に犯罪の成立を阻却すべき事情は認められないから,本件立ち入り行為について刑法130条前段の罪が成立する」

本件の事案は,政党のビラを各住戸に配布するために,分譲マンションの玄関出入口から入った被告人が,1階廊下を経てエレベーターに乗って7階に上がり,7階から3階までの各住戸のドアポストにビラを配っていたところ,マンション住人に声をかけられてその配布を中止したが,その後に逮捕に至ったというものです。

1審では,被告人の行為は「住居」に立ち入る行為ではあるものの,①マンションへのビラ配りのための立ち入りは刑罰をもって禁じられているとの社会通念は確立しているとはいえない,②はり紙の記載内容やマンションの構造から,外観上部外者の立ち入りを禁止したことが明らかとはいえず,管理組合の部外者立入禁止の意思表示が来訪者に伝わるような実効的な措置がとられていたとはいえないことをあげ,無罪を言い渡しました。

原審は,この1審判決を破棄し,管理組合がビラ等の配布のための立入を禁止していること,はり紙の内容,掲示位置,マンションの構造などから,実効的な措置がとられていなかったとはいえないとして,違法性阻却事由は認められないとして,罰金5万円の有罪判決を言い渡しました。

本件では,共用部分を「住居」と解していますが,本件の前年に出された最高裁H20/04/11判決(立川反戦ビラ配布事件)では,集合住宅の共用部分を「邸宅」であると判断しており,両者の整合性が問題となりそうですが,20年判決の事案は,住人の他に別個管理者が存在していたのに対し,管理権者とされるのは居住者から構成される管理組合から派生した理事会であって,居住者と同視できるため,判断が分かれたのではないかと思われます(M)。

上記政治的ビラの配布が政治的表現の一態様であることを考えると,1審判決にも相当な理由があるように思われます。二つの最高裁判決が出た以上しかたないのでしょうが,単なる迷惑の範囲を超えて,国家が処罰すべき犯罪行為というべきかどうか,とても考えさせられる事件です。また,これが商業宣伝ビラの場合はどうか?各階ではなく1階玄関脇にある各部屋のポストへの投函だった場合はどうか?などのバリエーションも考えられます(K)。
| 法律/刑事 | 22:27 | - | trackbacks(0) |
住居侵入罪01
建造物侵入罪における「侵入」とは?

刑法130条前段

最高裁平成19年7月2日決定 判時1986号156頁

「被告人らは,現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で,現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入ったものであり,そのような立ち入りが同所の管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから,その立ち入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても,建造物侵入罪が成立するものというべきである。」

 事案の概要としては,被告人らは,ATMを利用する客のカードの暗証番号,名義人氏名,口座番号を盗撮するため,ATMの設置されている,行員の常駐しない出張所に営業中に立ち入り,うち1台のATMを相当時間にわたって占拠し続けることを共謀した。このような共謀に基づき,被告人らは,二日にわたり,二カ所の無人出張所で共謀にあるとおりの行為に及んだ,というものです。

本件のように,不特定多数の人が立ち入ることを予定している建造物について,不法な目的で立ち入る行為は,下級審裁判例でも建造物侵入罪が成立するとされてきました(仙台高判平成6.3.31(国体開会式を妨害する目的での侵入事例)等)。本件はその流れを踏襲するものですが,重要な意義を有するのは,「立ち入りの外観が一般の現金自動預払機利用客のそれと特に異なるものでなくても」建造物侵入罪が成立すると明確に示した点にあります。

判例は,許諾と錯誤について「真実を知っていたならば当該行為を許さなかっただろう」という条件関係が認められれば,広く許諾を無効とする立場を採用していると一般に解されています(殺人罪について,最高裁昭和33年11月21日判決)。本件もこのような考えに依っていると思われますが,これに対しては,真の目的が外見上判明しない場合には包括的承諾の範囲内の立ち入りであり,真の目的が明らかとなった時点で不退去罪の成否を問題とすれば足りるとする学説上の異論もあります。

もっとも,本件に限って言えば,不退去罪は退去要求が必要であるため,成立を認めるのは困難であったという事情がありましたし,上記学説は判例とは異なり,住居侵入罪を状態犯であると解するので,議論の前提が異なるという点に注意が必要です。

また,判例の傾向として,住居侵入罪の処罰範囲が拡大しているということも指摘できるでしょう(最高裁平成20年4月11日判決,同21年7月13日決定)。(M)

| 法律/刑事 | 12:44 | - | trackbacks(0) |
公判前整理手続 証拠開示命令02
 裁判所は検察官に対して証拠開示の対象となるものか判断するためにメモの提示を命ずることができるか?
警察官が私費で購入した私物ノートに記載されたメモは開示の対象になるか?

刑訴316条の26,316条の27,犯捜規13
最決H20/06/25 判タ1275号89頁,判タ1282号60頁,判時2054号198頁

「警察官が捜査の過程で作成し保管するメモが証拠開示命令の対象となるものであるか否かの判断は裁判所が行うべきものであるから,裁判所は,その判断をするために必要があると認めるときは,検察官に対し,同メモの提示を命ずることができる・・・」「本件メモは,本件捜査等の過程で作成されたもので警察官によって保管されているというのであるから,証拠開示命令の対象となる備忘録に該当する可能性があることは否定することができない・・・」

上記は覚せい剤の自己使用事件において,期日間整理手続に付された事案です。争点は,尿提出までの警察官の被告人に対する行為の適法性であり,弁護側は主張関連証拠として警察官らの作成したメモの開示を請求しましたが,検察側は「個人的メモ以外は不存在」として争いました。
福岡地裁は,開示を命令。検察側は即時抗告。
福岡高裁は,即時抗告を棄却。検察側は特別抗告。

上記は,平成19年12月25日の最高裁決定を前提に判断されたものです。ただ,その判例では公文書という観点から判断されていたため,私費で購入されたノートで専ら自己の使用に供されているという主張が出てきたことから,これも開示対象になるという判断をしたものです。

そうすると,今度は「備忘録を一切作成しなかった」という言い訳がありうるところですが,それについては,犯捜規13条があるのに警察官が備忘録を一切作成しなかったという事実は,その警察官に対する証人尋問の証言の信用性を大きく損なうのではないかという方向を示した裁判例もあります(大阪地裁H20/03/26判タ1264号343頁)。
| 法律/刑事 | 21:58 | - | trackbacks(0) |
公判前整理手続 証拠開示命令01
 開示すべき証拠は検察官手持ちのものに限るか?

刑訴316条の26,316条の27,犯捜規13
最決H19/12/25 判タ1282号60頁,判時2054号198頁

「検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,または入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含むと解するのが相当である。・・・取調警察官が,同条(犯捜規13)に基づき作成した備忘録であって取調べの経過その他参考となるべき事項が記載され捜査機関において保管されている書面は個人的メモの域を超え,捜査関係の公文書である。これに該当する備忘録は,当該事件の公判審理において当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合,証拠開示の対象となりうる。」

上記は偽造通貨行使事件について,期日間整理手続に付された事案である。弁護側は警察官の取調べにおける自白の任意性を争い,この主張に関連する証拠として「被告人に係る警察官の取調メモ・取調小票・調書案・備忘録等」の開示を請求しました。
東京地裁は,弁護側の請求を棄却。弁護側は即時抗告。
東京高裁は,地裁決定を変更して取調メモ等の開示を命令。検察側は特別抗告。

上記最高裁決定は,まず,開示対象は「検察官が現に保管しているもの」に限られると解されていたものについて,それに限られないとして開示範囲を拡大したと解されるものです。次に,警察官の作成した備忘録〜取調メモは,私的メモ(個人的なメモの類)にあたるとして開示の対象外とされていたものについて,捜査関係における公文書という見方ができるということから開示対象とした点に意義があります。

上記については,条文の文言を超えるのでは,拡大された範囲の限界が不明ではないかとの批判もあるところですが,平成20年6月25日の最決は,開示対象の判断は裁判所に属するとも述べていますので,弁護側としては,これに関連しそうな事案では,この制度を活用し裁判所の判断を仰ぐべきということになるかと思います。
| 法律/刑事 | 21:02 | - | trackbacks(0) |
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